2004年3月5日東京都議会文教委員会
理念なき工業高校つぶしの契約議案

○曽根委員 この契約議案は、都立世田谷地区工業高等学校を新たに設置するために、現在の世田谷工業高校を増改築するというものです。この世田谷工業と小石川工業の統廃合による新しい工業高校をつくるという計画に関連して、何点か質問させていただきます。
 最初に、この統廃合というのは、工業高校同士の統合によって、新宿区にある小石川工業を更地にして、世田谷にある現世田谷工業に新しい高校をつくる。全面建てかえではなく、一部増改築という形でつくるようですけれども、そういう計画で、工業高校全体の統廃合の一環であり、都立甘同校全体の見直しの一環になるわけです。

 小石川工業の関係者から、九九年にこの計画が発表されて以来、繰り返しの請願陳情が出されておりますし、私ども文教委員のところにもたびたび要請がされております。一貫して、小石川工業がなぜ統廃合の対象になったのかと。なかんずく、小石川工業の場合は、学校そのものが世田谷の現世田谷工業に移ってしまうことと、実質的には吸収合併じゃないかということで、なおのこと不満が非常に高いという現状です。

 そこで、事実上の小石川工業が廃校になってしまう、世田谷に吸収合併ということになった理由、小石川工業が統廃合の対象になった理由について、ご説明をお願いしたいと思うのです。

○山川都立高校改革推進担当部長 統廃合対象校に選ばれた理由についてでございますが、小石川工業高校につきましては、都市計画道路が通ることが予定されておりまして、計画が実施されますと、小石川工業高校の教育環境が制約されること。二つ目といたしまして、中途退学者が多く、改善が必要な学校であること。三つ目といたしまして、二次募集が多いこと。四つ目といたしまして、校舎が老朽化しており、改築の必要があることなどを総合的に判断して、改革対象校として選定したものでございます。

○曽根委員 私は、この統廃合については二重に問題があると思うのです。一つは、今のご説明の中に、大きく四項目くらいですか、小石川が工業高校であり、専門学校であることは、理由には挙げられておりませんでした。しかし、実際に統廃合計画全体を見れば、明らかに統廃合で削減される学校の半分以上が工業もしくは商業などの専門学校なんですね。
 最終計画が一昨年の秋に出ましたが、それまでの、平成九年度までの学校数二百八校のうち、五十四校、四分の一しか占めていない専門学校が、統廃合で削減される二十八校のうち、十五校、半分以上を占めているということで、やっぱり専門学校ねらい撃ちじゃないかという指摘は、事実として当たっていると思うのです。

 昨年の今ぐらいでしたか、私、商業高校の削減も、十九校から十一校に減らされてしまうということで、指摘をさせていただきましたが、工業高校の場合も、二十七校から十八校とマイナス九校になるわけです。しかも、第一次計画が出た平成九年の計画では、工業高校は、この計画全体が終了した時点ではマイナス八校くらいだろうという見通しで始まったものです。それが最終的な新配置計画になったら、さらに一校減らされて、マイナス九枚になっちゃっているわけです。全体の三分の一が削られるという形になります。

 これは明らかに、専門学校が統廃合の中でもやり玉に事実上あげられているし、しかも、エ業高校の場合は当初の予定からさらに一校減らす学校をふやしてしまっている。これは一体どういうことなのかということについてお伺いします。

○山川都立高校改革推進担当部長 最終的に九減となった結果の理由でございますが、第一次実施計画の策定後、新たな実施計画策定までの間に、専門高校のあり方についてさまざまな検討を行ってきておりまして、こうした検討を踏まえて、工業高校につきましては九校削減することといたしました。

 新たな実施計画では、商業高校と工業高校を母体とする、新しいタイプの専門高校であります産業高校を設置することとしておりまして、こうした点で工業高校の削減数がふえた面がありますが、日本のものづくりを支えてきた工業教育自体の重要性は.変わっていないと考えておりまして、引き続きその充実に努めてまいりたいと考えております。

○曽根委員 工業高校重視は変わっていないといっても、実際には、減らされる学校が商業と並んで一番多い分野になっていることは事実なんです。
今のお話にあった根拠として、今、産業高校が話に上がりましたし、工業高校から産業高校になったり−−これは工業と商業が一緒になった場合に産業高校をつくっているわけですね。それから、工業の統廃合で科学技術高校というのもつくっています。それから、総合学科高校になった例、つばさ高校などがもうスタートしていますが、そういう例もあります。

 全体として見ると、工業高校というのは、今までは、電気や、建築関係や、土木、、機械工学など、それぞれの分野で高い技術力と資格をきっちり取らせる、技術力を身につけさせる、現場で即、戦力としての産業人を育てるというのが目標として行われ.てきた。私、そういう生徒を育てていくということ自体が、今の東京の産業界の求めている人材と合致していない、ミスマッチなんだというのならともかく、私が知る限り、ものづくりでいえば、大田を初めとして、まさに現場で即、本当に最先端の機械を動かせるという技術者を求めているのは間違いないと思うんですよ。

 それから、商業でいっても、商店街をはじめとして、商業関係の方々は若手の人材を求めている。これは昨年やりましたから、省略しますが、いずれにしても、今まで、商業、工業のあり方をより充実させる方向こそ専門学校のあり方じゃないかと思っているわけですが、実際には、総合学科になったところ、それから、産業高校はこれからですけれども、八王子工業と八王子商業の統合については、昨年もこの委員会でも論議がありましたように、本当に産業界に出て役に立つ人材が育つんだろうかという疑問が、現場の方からは相変わらず出ているわけです。

 そういう点で、私は、工業高校のあり方は、やはり現場で技術や資格を生かして働ける産業人に育てるという今までのコンセプトは、今日なお大いに重視すべきであるということを強調したいと思うのです。
 専門高校の検討委員会の報告書でも、いろんなタイプをつくるとはいっていますが、その中にも、一五ページの中で、目指す生徒像として、やはり現場で実践的にすぐ技術を生かせる生徒像というものも掲げているわけで、この点は重視していただくように強く求めておきたいと思うのです。

 それともう一つ、小石川工業が教育条件が悪くなるということで、例えば校舎の敷地問題がかねてから理由の一つになっているわけです。これは都市計画道路が入ってくるということですが、ことでは学校の先生方が、この道路計画がもし実行されたとしても、残りの校舎の敷地が一万六千平米残ると。これでも工業高校の中では決して狭い方ではなくて、十分に工業高校としてやっていける広さが残るじゃないかということで、跡地計画については、独自に、これは建築科の先生がつくったらしいんですけど、道路が入った後の図面もつくって、建物の計画をこうすればやれる、グラウンドもこちらに確保できるという計画まで出して、学校の今後の将来のあり方については、熱心な計画づくりが現場で行われていました。それというのも、小石川工業というのは、特色ある教育を頑張ってやってきたという工業高校としての伝統があるからだと思うのです。

 私は改めてお聞きしておきたいんですが、小石川工業のこうした特色ある教育の中身が、世田谷に持っていってどういう形で引き継がれていくのか、生かされるのか、この点について教育庁としてはきちんとした計画を持っておられるんでしょうか。

○山川都立高校改革推進担当部長 小石川工業高校のよき伝統、校風につきましては、私どもも十分評価しておりまして、世田谷地区工業高校に引き継いでまいります。
 新しい学校の学科構成につきましても、小石川工業高校の既存の学科構成も踏まえつつ定めておりまして、また、企業との連携等の実績につきましても、できる限り新しい学校に引き継いでいくようにしていきたいと考えております。

○曽根委員 学科構成でいえば、建築土木ですか、これが名前はちょっと変わりますが、統合された形で、学科としては、世田谷に今ない建築関係の学科が入るということは確かのようです。しかし、世田谷と一緒になる小石川工業ならではの教育のあり方や特色が本当の意味でどこに生かされるのか。建築科をつくるということは当然ですが、例えば企業との協力、いわゆるデュアルシステムなどが検討されているようですけれども、これは統廃合しなくても、工業高校として残る二十校近い学校では、当然それぞれでやっていくんだと思うのです。
 小石川が、いわば名前だけじゃなくて、中身もちゃんと何らかの形で引き継がれるとすれば、どういうものが統廃合ならではの特色として残るのか、その点についてもう一回お聞かせいただきたいと思うのです。

○山川都立高校改革推進担当部長 小石川工業高校につきましては、例えば、今お話がございましたような建築関係の学科、都立の工業高校では数少ない建築関係の学科があり、運営されているということ、あるいは大学進学においてすぐれた実績があるということ、あるいは地域社会や企業との連携の実績が高い、あるいはまた同窓会の支援が強く、その関係もございまして、就職率が極めて高いということもございますので、こういうことも踏まえて、新たな学校の中でこうした伝統が生かされるような運営をぜひ考えてまいりたいというふうに考えております。

○曽根委員 今の答弁の話がそのとおりになれば、ある意味で、統合しても、実際にはいろんな形で人脈が残っていくよ、小石川の同窓会も世田谷に行っても生かされるよということが実現できればいいんですけれども、実際には、同窓会の方々の話を聞いても、小石川のいわば土地もなくなり、生徒も完全に世田谷に移れば、生徒相も変わってくるだろうと。
 今まで小石川に通ってきた生徒は、世田谷に通えるのは、その地域でいうと大体二割くらいしかいないというふうにいわれていますし、OB会は、小石川の名前も土地もなくなって、じゃあ、どうやって世田谷に自分たちの伝統が残せるんだ、その保証もないということで、非常に反発を強めているわけです。
 前に、私、この委員会でも取り上げたので、余り詳しくは繰り返しませんが、小石川工業は、先進的な市民講座を取り入れた学校として、どうやって世田谷に、自分たちの伝統が残せるんだ、その保証もないということで、非常に反発を強めているわけです。

 前に、私、この委員会でも取り上げたので、余り詳しくは繰り返しませんが、小石川工業は、先進的な市民講座を取り入れた学校として非常に有名になって、例えば、これは宮大工の藤森さんという方が、市民講師として授業を担当して、単に授業をやるだけじゃなくて、宮大工という非常に特殊な、しかも高度な技術を必要とする世界での若手のナンバーワンといわれている人らしいんですけど、その方がわざわざ自分の仕事として、一つの納屋をつくるという作業を高校生を参加させて、作業も全部やらせるということもやって、すばらしい授業をやっているんですね。その翌年は、この先生の指導のもとにおみこしをつくる、これも大変な技術が要ることなんですが、一人の女子高生を中心に徹夜で頑張って、ちょっと文化祭には間に合わなかったけれども、暮れまでにはおみこしを完成させるという授業を翌年またやっている。なかなかすごい授業なんですね。
 私、聞くところよると、当時の遠山文部大臣が市民講師の授業を見たいということで、都内で探したら、まずここが挙がった。小石川工業に見学に来たいという直前まで話が進んだんだけれども、小石川工業は間もなく統廃合されるということで、だれかが断ったと、話は実らなかったということまで聞いているんですね。関係者はみんな知ってますから。

 こういう具体的にやられている教育の中身が、この藤森先生も世田谷に移ってしまえば、協力はできないといっているわけですし、これ(市民講座)は残せないだろうというふうに思います。
 そういう点では、私は、小石川工業の統廃合というのは、本当の意味でこの学校を改善、改革していこうという理念はないんじゃないかというふうに思わざるを得ないんですよ。
 もう一つ、それを特に私が強く思ったのは、工業高校は十二の統廃合がありますが、ほかの場合はすべて新しいタイプの高校をつくるんです。新しいタイプの高校については、私、先ほどいったように意見あります。しかし、例えば、八王子工業は産業高校に、江東の工業は科学技術高校に、それから王子工業、私の地元の北区の王子工業は単独で総合学科に、羽田工業がつばさの総合学科にというふうに、十二のうち十一の場合は、新しい夕イブの高校づくりなんですが、なぜか、世田谷工業と小石川工業だけは単独の工業高校同士の統合で、工業高校をつくるというただそれだけの統廃合なんですよ。
つまり、新しい何かをつくるというための理屈もないんです。この統廃合については。
 だから、私は、うがった見方をすれば、第一次計画のときにマイナス八校だったのが、マイナス九校になった、その一校が小石川じゃないかと思っているんですよ。はっきりいって、理念がないんじゃないか。教育庁が掲げた工業高校、専門高校の改革の理念すらここには入ってないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

○山川都立高校改革推進担当部長 理念の問題ですが、小石川工業高校は世田谷工業高枚と発展的に総合される中で、両校の伝統、校風を引き継いだ世田谷地区工業高校となるだけでなく、新しい工業高校では工業の専門性の基礎、基本を重視し、多様な進路への対応や、インターシップの活用など、教育課程の工夫を行い、さらに地域等との連携を通して、物づくり産業を支える人間の育成を図ってまいります。

 世田谷地区工業高校は、こうした教育実践を通して、工業の基幹的な学科を設置した都の工業教育を担う学校になるものと考えております。

○曽根委員 今の山川部長のお話は、小石川と世田谷工業の統合によって、こういう高校をつくりますよとはいうものの、統合しなければできない話ではない。私にいわせれば、小石川も世田谷も両方残して、それぞれでそういうことをやればいいというふうに率直にいわせていただきたいと思う。だって、今の話は、これを統合しなければできないことじやないでしょう。

 理念があるとすれば、率直にいえば、こういう問題もあるんです。わかりやすく、ちょっと図にしてきましたけれども、これは二十三区だけで申しわけないんですが、二十三区内にある工業高校でこの青の三角印が残る工業高校だ。赤の三角印が統合されるところなんです。

 私、注目しているのは、山手線内に今工業高校は二校しかないんですけど、港工業は統合して、わざわざ大田の外れのここに大田の単位制高校として統廃合される。小石川工業は世田谷に持っていくということで、都心から工業高校が排除される。この中に二校しかなかったものがなくなるわけです。
 都心から、山手線内から排除されてしまう。実際に、小石川工業は環状線のいわば骨格道路、二十七メートルの道路をつくるために、それが理由の一つとなって、統廃合されるわけで、都心中心の都有地をほかの目的に、はっきりいえば、都市再生に生かしていこうという流れの中で、この二十三区内の工業高校、「「とにかく中退が多い、二次募集が多い」ということを理由にしながら、本音をいえば、外に出してしまえという流れの中に、私は率直にいって都立高校が犠牲にされているということをいわざるを得ないと思います。

 改めて二百八校の都立高校を百八十校に減らす。特にしわ寄せを受けている専門高校、定時制高校など、こういうところは、中等教育のいわば底辺でもあり、また、非常にハンディを抱えた生徒たちを受け入れている重要な教育の場であるからこそ、私は、本当の意味での改革に改めて立ち返って計画を見直すべきだということを申し上げておきたいと思います。
以上です。

○東委員長 ほかにありませんか。
ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
本案に対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
    [「異議なし」 と呼ぶ者あり]

〇東委員長 異議なしと認め、契約議案に対する質疑は終了いたしました。
この際、本案に対して、意見のある方は発言を願います。

○曽根委員 今、質疑をいたしましたように、第百四十号議案、都立世田谷地区工業高等学校増改築及び改修工事の請負契約については、都立高校の統廃合計画の二十八校削減の一環であると同時に、重要な役割を果たしている専門学校、工業高校の削減でもあるということから、我が党は、契約案件ではありますが、こういう統廃合絡みの案件ということで反対をいたします。
以上です。